2016年10月1週
10月1週
【推移】
【推移】
3日(月):
週末のNY株式市場は反発。ドイツ銀行の経営懸念が和らいだことで、金融株が広く買われた。MBS不正販売問題での課徴金が54億ドルで和解合意に近づいたという報道が材料視された。最大140億ドルからは後退したことになる。週間ベースでは主要3指数とも3週続伸。しかし月間ベースでのS&P500は0.1%下落で2カ月連続のマイナス。
週末・月末・中間期末の日経平均は243円の下落。日経平均は3ケタの下げと上げの繰り返し。週間では304円の下落となり、週足では陰線となった。月足も陰線。日本株が世界の主要な株式市場の中で「一人負け」と日経。
日経平均株価は4〜9月の半期ベースで3期連続のマイナス。「円高が日本株の足を引っ張り、出遅れが続く」との解釈だ。4〜9月期の日経平均は前下期から2%下落。
同期間米国株は4%上昇、ドイツ株は5%、新興国ではブラジル株も上昇。「下半期の日経平均占ううえで、カギは米利上げの動向」と。大企業製造業DIはプラス6。前回と一緒。市場予想はプラス7。設備投資は6,3%。市場予想は6.7%を下回った。経常利益9.2%減。前回は7.3%減だから減益幅拡大。あまり良くはない結果。それでも指数は3ケタのプラス展開。経済指標っていったい何なのだろう。市場は神経質すぎるのか、あるいは無視することも好きなのか。騒ぐ材料を市場関係者に提供しているだけなのか。踊ることなく淡々と経済指標を消化することが大切なのだろう。短観悪化で円安期待だとしたら、少し刹那的すぎる。
土曜日経1面では「日銀国債買い入れ減額」の見出し。足元で進む長期金利の低下を抑える狙いだという。今回は長期金利の指標となる新発10年国債が入る「5年超〜10以下」。ここの国債の購入額を1回あたり200億円減額。「10年超〜25年以下、25年超」も100億円ずつ減額。日銀が購入金額を減らせば国債価格は下落し利回りは上昇する。これが日銀の本心なのだろう。というか金利で景気を左右する限界なのかも知れない。いずれにしても、インフレ志向に変身した日銀。インフレでは買い手の論理が相場を支配する株式市場にとっての光明でもある。デフレ脱却のためにはマネーストックの増加と金利の上昇という対立命題の解を求めざるを得ない。
25日移動平均が16720円。75日線が16359円。200日線16773円も近づいてきた。ドイツ銀問題も結局はイスラムの新年を控えた資金の引き上げだったと考えれば結構納得。表面で起こっている問題と時間軸。そして背景を考えないと相場はいつまでたっても表面しか見えないのかも知れない。
日経平均株価は148円高の16598円と大幅に反発。ドイツ銀行を巡る懸念の後退。円高一服も支援材料。上げ幅は一時200円を超えた。日銀短観は、大企業製造業の業況判断DI、設備投資計画とも市場予想をやや下回ったが影響はほとんどなし。東証1部の売買代金は1兆6279億円と9月6日以来の低水準となった。「当面は75日移動平均線(16369円)と200日移動平均線(16758円)に挟まれたボックス相場となりそうだ」という声が聞かれる。ホクシン、アダストリア、サイバーコムが上昇。日立、村田が下落。
4日(火):
10月4日は投資の日。今年で制定20周年を迎えた。「10」と「4」を「とうし」にかけた語呂合わせ。しかし「実は株式投資を始めるタイミングとしても侮れない」と大和のレポート。最近の12年間のパフォーマンス。各年の「投資の日」(またはその直前の営業日)に日経平均株価に投資したと仮定するとその年の年末までと、半年後までのパフォーマンスは、いずれも9勝3敗と上昇確率がたいへん高い。同期間の株価の平均騰落率で見ても、年末までではプラス5.6%。半年後までではプラス8.1%と大きい。
週明けのNY株式は反落。週末上昇の反落という解釈。9月の米新車販売台数が前年同月から減少したことが投資家心理をやや悪化させた。金利上昇が上値を押さえたとの見方もある。9月のISM製造業景況感指数は市場予想を上回り50を2カ月ぶりに上回った。一方8月の建設支出は増加の市場予想に反して減少。
ISMの好調を打ち消した格好となった。7〜9月期に米企業が発表した自社株買いの合計額が1150億ドル。過去9四半期で最も低い水準になったとの集計が発表された。「長期的に米株式相場に対する警戒シシグナルになる」という指摘はアナリストのアリバイつくりみたいなものだろう。投資の日は株高で通過。
ノーベル医学生理学賞の受賞も市場の自信復帰に多少役だった面もあろう。「ドル円も久々に25日線を上に抜けた。円安・株高の流れがじわじわと強まりつつある」との声も聞かれる。カラ売り比率の37%台は好感したい。
日経平均株価は136円高の16735円と続伸。終日買い優勢の展開が続き幅広い銘柄に買いが入った。下期入りに伴う国内の機関投資家の買いを指摘する声も聞かれた。東証1部の売買代金はで1兆7528億円と依然低調。トヨタ、ホンダ、三菱UFJ、三井住友FG、タカラバイオ、東エレク、信越化が上昇。ユニファミマ、しまむら、OLC、三井不が下落。
5日(水):
欧州株式市場は英仏独と1%超の上昇。だがNY株式市場は続落の展開。「英国のEU離脱に伴う影響や年内の米利上げをめぐる懸念が強まっている」との解釈。だが欧州株の上昇を想定すると米利上げ観測の方が影響度は高いような印象。もちろん英ポンドが31年ぶりの安値を更新。英国株はポンド安で上昇した面は否定できない。しかしFRB当局者のタカ派発言を嫌気して売りが優勢になった格好。視点は来週のアルコアから始まる決算に移行してきた。S&P500採用銘柄の利益見通しは1.5%減。そうなれば6四半期連続の減益と良くはない。「10月は市場にとって最高の月というトレンドと10月は売られる月というアノマリーの葛藤」。そういう指摘もある。もっとも2000年以降10月はS&P500が1%以上動いた日が最も多い。過去25年の平均は1.9%%高と最も高い。
7日発表の9月の米雇用統計と14日に行われるイエレンFRB議長の講演が焦点と見られている。通過するだけに過ぎなかろう。
7月の6連騰以来の3連騰。9月21日以来2週間ぶりに16800円台を回復。25日線(16740円)、200日線(16398円)を上回った。円安トレンドもフォローウィンドで上値を抑えてきた75日線をキープ。
「ドル円は103円30銭がポイント。一目均衡表の雲上限を上抜ける」という声もある。日経平均株価は83円高の16819円と3日続伸。3日続伸は7月19日までの6日続伸以来、2カ月半ぶり。東証1部の売買代金は1兆8878億円。ようやく200日移動平均(16734円)を上回った。9月7日以来、約1カ月ぶり。25日移動平均線(16740円)も完全に上回った。
ポンド安+ドル高=NY株安・円安→日本株高の構図は実現した格好。トヨタが3日続伸。任天堂、イマジカロボ、巴川紙が上昇。東電、東レが下落。
6日(木):
裁定売り残は前週比905億円増の7116億円。過去最高を更新。9月9日以来18年ぶりの買い残との逆転状態を継続している。買い残は1717億円増加したが6919億円。1兆円割れの状態なら株価を左右する水準ではない。
気にかかるのはIMFの金融安定報告書。「日本の主要銀行は海外事業の縮小に追い込まれる可能性」が指摘された。ドルの調達コストの上昇が背景だという。
主要銀行の総資産に占める海外資産の割合は2012年12%→2015年16.7%。米利上げ→ドル調達コスト上昇の図式は確かにそうだろう。ただIMFがなぜ指摘したのかがわからない。海外融資を縮小し国内融資を拡大せよとでもいうのだろうか。利ざやの薄い国内融資を増やしてくれるならばそれは結構なこと。
財務省が「国内志向」になってくれたのかも知れない。福島原発の廃炉費用も必要になってくるのだろうか。
日経1面で始まった特集「日本国債・見えざる手を冒す」。日銀にとって今日借りて明日返すという極めて短期の金利を操るのはお手の物。しかし長期国債をもハンドリングしようとしている姿勢。
ここに市場の疑心暗鬼は存在する。不気味なのは有力な市場関係者を集めてささやいたとされる日銀幹部の言葉。「我々には無限の能力がある。試さない方がいいですよ」。これは「我々には印刷機がある」と読み替えるべきなのだろうか。
日経平均は4日続伸。TOPIは4カ月ぶりの高値を付け200日線(1343ポイント)を上回った。昨年12月18日以来のことになる。日経平均は既に9月5日に一度上抜けていたから追いついた格好。日銀のTOPIX重視の方向が奏功した格好だ。25日線は1335ポイントで上抜く可能性が出てきた。MASDがゴールデンクロスしたことは好材料だろう。7月19日以来の4日続伸の背景は円安トレンドの進行。NYでは104円台をつけてきた。「ほとんど為替だけで上に行ったようなもの」という声もある。その意味では「高値16971円と17000円を取りきれず迫力不足は否めない」という印象もうなずける。「またぞろ、はしごを外されるのではないか的な恐怖感が伴う時期」という声も聞かれる。
日経平均株価は79円高の16899円と4日続伸。円安進行を好感した買いで自動車や機械など主力の輸出関連株が上昇。ただ9月の米雇用統計と来週初の3連休を意識した格好での買い控えモードとなった。東証1部の売買代金は1兆8673億円。富士通、SONPO、小野薬が上昇。ABCマートが下落。
7日(金):
興味深かったのは三井住友銀行の高橋誠一郎副頭取。安部首相の会食に良く登場する御仁だ。「日本は国債残高の多さを理由に株・債券・為替が軒並み売られるトリプル安に陥るリスクが指摘される。ただこうしたパニック的な展開を今すぐ懸念する必要はないだろう。過去にも金利の急上昇を見込んで外国人投資家が円債売りを仕掛けたがことごとく失敗した」。
裏返して読めば「株安・金利上昇・円安」はパニックの原因だということ。円安がパニックになるのが常識だが、今は刹那的に円安を望むマーケット。デフレ脱却を唱える市場だが、本来はインフレよりも悪くないとう現実。これらが正確に首相に伝わっているならば東京市場の未来は明るい筈。
雇用統計が良好で週末のNY株が利上げ懸念からいったん下落する可能性もある。しかしも週明け月曜は景気実態の良さに着目した巻き戻しに期待できようか。
東京市場の月曜休みはそのためのワンクッションと考えたい。サッカー日本代表の2連勝も自信復帰に多少役立つかもしれない。
カラ売り比率は36%台と安定。まずは9月メジャーSQ値17011円を眺めたいところ。
日経平均株価は39円安の16860円と5日ぶりの反落。米雇用統計をにらんで投資家の様子見姿勢は強く、売買は低調。東証1部の売買代金は1兆6559億円。任天堂、小野薬、ファナック、ブリジストンが上昇。トヨタ、セブンアイ、ブランジスタが下落。東証REIT指数は5日ぶりの反発。
(2) 欧米動向
イスラムのヒジュラ暦が10月3日に新年を迎えたことは結構知られている。
だが今年はほぼ同時にユダヤ暦の新年も10月2日に迎えた。
新年(ユダヤ暦5777年)は日没後に始まり翌日没に終了。
今年は10月2日の日没に始まり10月3日の日没に終了した。
イスラムのヒジュラ暦の新年株高アノマリー。
ユダヤ暦では新年10日後のアノマリーになる。
ユダヤ系の人の多いウォールストリートの相場格言。
「株は新年(ローシュ・ハッシャーナ)に売り、贖罪の日(ヨム・キプール)に買い戻せ」。
新年から贖罪の日までの10日間はユダヤ教では最も神聖な時とされるという。
だから商いが少ないと言われるが昨日のNY3市場の売買高は70億株超。
あまり感じられない。
因みにユダヤの新年10日間は「畏れの日々」と呼ばれるという。
畏れの日々が明けるのは10月13日。
アルコアを皮切りに米決算発表時期と重なる。
因みに・・・。
ユダヤ暦の新年は、昨年9月13日2014年は9月24日、2013年は9月4日。
リーマンショックの2008年は9月29日だった。
リーマンショック後の安値は最初に9月28日に付けたことが甦る。
新年の食べ物は蜂蜜をつけたリンゴとの話もある。
英半導体アーム社のCEOサイモン・シガース氏が日経朝刊に登場した。
ソフトバンクの孫さんが3.3兆円も使って買いにいった企業のトップである。
結論は「ポストスマホの事業の柱はIoT」。
スマホ→自動車関連の図式となる。
確かに車はタイヤの上にコンピュータが乗っている。
この方向性にブレはないだろう。
「完成車や部品メーカー、ソフトウェア会社との対話している」。
その行方は「コネクテッドカー(つながる車)」。
「インフォテイメント」という音楽・映像・ナビゲーションなどがまずはとっかかり。
トヨタと7年先を見据えた技術開発」は当然自動運転に向かおう。
「アームの競争力は技術そのものでなく、生態系を作り上げる力。
アームの半導体設計が世界標準になるようにしてきた」。
2020年の車載用半導体市場は15年比34%拡大見通し。
フォーカスはここにある。
週末のNY株式市場は続落。
NYダウは週間で4週ぶりの下落となった。
英ポンドが対ドルで1.4%下落。
市場心理が悪化したとの解釈。
雇用統計での非農業部門雇用者数は15.6万人増と市場予想を下回った。
だが市場への影響へ限定的。
年内利上げ観測を変えるようなものではなかった。
金や銀の値下がりから素材セクターが軟調。
11日のアルコアの決算発表から企業業績に注目点は移動。
S&P500構成銘柄の市場予想は1.5%減となっている。
(3)アジア・新興国動向
大和のレポートの指摘。
「中国の貿易は輸出、輸入ともに昨年以降前年同月比 でマイナス成長に陥る傾向。
輸入は今年7月まで21カ月連続でマイナス。
8月は1.5%増で輸出のマイナス幅も縮小傾向。
13日(木)に発表される9月の貿易収支で輸出入ともにプラスとなれば、中国経済が緩やかに回復基調を強めていることが確認できよう」。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
10日(月):体育の日で休場、ユーロ圏財務相会合、ノーベル経済学賞
11日(火):景気ウォッチャー調査、国際収支、独ZEW景況感、EU財務相理事会、インド休場
12日(水):機械受注、米FOMC議事録、3年・10年国債入札
13日(木):都心オフィス空室率、ソニーのプレステVR発売、米輸入物価、BOE金融委員会、中国9月貿易収支、ノーベル文学賞
14日(金):マネーストック、オプションSQ、米ミシガン大学消費者信頼感、企業在庫、イエレン議長講演、APEC財務相会合(ペルー)、中国経済指標
IMFが日本の成長率を16年0.5%、17年0.6%に上方修正したことも多少は好感されよう。
ポンド安+ドル高=NY株安・円安→日本株高の構図は悪くない。
方向感の欠如と売買エネルギーの低下は否定できない。
しかし季節性と材料性と投資心理の好転は好材料視したいところ。
「理外の理の株高」だろう。
7〜9月の公的年金の運用成績がプラスに転じた。
背景は株価の反転。2015年10〜12月期以来3四半期ぶりとなった。
GPIFの運用資金は約130兆円。
7〜9月の運用益は1.8兆円。
国内株2兆円。
外国株で5300億円のプラス。
一方で外国債は1300億円、国内債は約6000億円のマイナス。
単なる四半期だけで物事を図るのは早計だが、それでも株安のマイナスを株高で取り戻した。
問題は債券のマイナス。
これが恒常的なものになるとすれは補てんできるのは株というシナリオになろう。
日銀の10年国債利回りをマイナスからゼロへという動きは変わらない。
ならば株高シナリオでの運用益確保がGPIF=厚労省=政府の目論見。
ココは結構重要な側面にいずれなってこようか。
「10月相場の騰落は下半期の相場への影響が大きい」と大和のレポート。
1949年以降の年度下半期のパフォーマンス。
10月に株価が上昇した年度は、下半期通じての株価の上昇確率も8割以上と高い。
その場合の10月〜翌年3月の株価平均騰落率も+14%以上と高い。
10月の株価が下落した年度と比べて差が大きい。
19月相場と翌年3月相場の株価騰落の方向は一致しやすいということもある。
最近10年間で16回、両者の騰落の方向が一致している。
外国人投資家の売りが出やすい10月に株価が上昇→国内勢の強気姿勢を反映。
その動きが同じ下半期末の3月にも繰り返されている可能性があるという。
★10月の騰落率がプラス→下期は30勝6敗。
上昇確率83.3%
平均騰落率プラス14.17%。
★10月の騰落率がマイナス→下期は17勝14敗。
上昇確率54.8%。
平均騰落率マイナス1.48%。
★10月と翌年3月のパフォーマンス
2015年10月プラス9.7%→3月プラス4.6%
2014年10月+1.5%→3月プラス2.2%
2013年10月マイナス0.9%→3月マイナス0.1%
2012年10月プラス0.7%→3月プラス7.3%
2011年10月プラス3.3%→3月プラス3.7%
2010年10月マイナス1.8%→3月マイナス8.2%
2009年10月マイナス1.0%→3月プラス9.5%
2008年10月マイナス23.8%→3月プラス7.2%
2007年10月マイナス0.3%→3月マイナス7.9%
2006年10月プラス1.7%→3月マイナス1.8%
(兜町カタリスト 櫻井英明)