2018年10月2週
《マーケットストラテジーメモ》10月2週
【推移】
【推移】
9日(火):
週末のNY株式市場は続落。底堅い内容となった米雇用統計から米国債利回りの上昇が継続し売り優勢の展開。ハイテクや通信サービス関連銘柄の売りが全体の下げを主導した。雇用統計は非農業部門雇用者数が13.4万増と市場予想の18.5万増を下回って着地。
ただ失業率は3.7%と約49年ぶりの水準に改善した。時間当たり平均賃金は前月比0.3%増、前年同月比2.8%増。9年超ぶりの大幅増となった前月の2.9%からやや鈍化した。10年国債利回りは3.23%台。一方週明けのNYダウは3日ぶりの反発。金利上昇を警戒したハイテク株の売りが継続し寄り付きは続落の動きただ一段の下値を探る材料に乏しく銀行セクターなどを中心に上げに転じた格好。
週末の日経平均は3連休前と米雇用統計控えで3日続落。「どうってことはないような3日続落だが元気がなくなっている投資家心理」という見方だ。
日経平均株価は314円安の23469円と4日続落。為替の円高トレンドが重石。トレンド追随型ファンドの売りもあったとの観測。システム障害による投資家の様子見姿勢もあったとの見方だ。ユニー・ファミマ、しまむらが上昇。スクリン、安川電が下落。
10日(水):
NY株式市場でNYダウとS&P500が小幅安。NASDAQは小幅高。IMFが2018年と19年の世界経済見通しを下方修正。米国と中国の19年見通しも両国の通商摩擦の打撃を受ける可能性があるとし引き下げた。
加えてトランプ大統領のコメント。「中国が対米報復関税措置を実施すれば2670億ドル相当の中国製品に対し追加関税を発動する」。米中貿易摩擦懸念が底流にある。
日経平均株価は36円高の23506円と5日ぶりに小幅反発。前日までの4営業日で約800円下落。短期的な過熱感がほぼ解消したとの見方から、自律反発狙いの買いが優勢となった。
25日線にほぼタッチしたことも悪材料の出尽くし感につながった印象だ。
ファストリ、ユニファミマの2銘柄合計で日経平均を約75円押し上げた。KDDI、アサヒ、ドンキが上昇。旭化成、信越が下落。
11日(木):
米国株式市場は大幅下落。NYダウは800ドル超の下落となり史上3番目の下落幅となった。NASDAQの下落幅は2016年6月24日以来の大きさ。S&P500は3.3%の下落となり2月8日以来の大幅安。9月20日の終値ベースの過去最高値から4.95%の下落となった。債券利回りの上昇を背景にリスク許容度が低下。米中貿易摩擦懸念拡大、フロリダに上陸したハリケーン「マイケル」への警戒感などが悪材料とされた。個別では「小売のシアーズの破産法申請準備」がトリガーという見方もある。「10年国債利回りが一時3.24%まで上昇したからの売り。VIX指数の上昇で売りが売りを呼んだ」という声もある。
日経平均株価は915円安の22590円と急落。下落幅は今年3番目の大きさ。午後2時半頃に22459円02銭の安値を付け1000円以上下落した場面もあった。
ただ200日線(22510円)はキープした格好。「警戒的に見ていたという声が多い」という市場関係者もいるが、免罪符的なコメントなのだろうか。「香港、上海、台湾の株式市場で下げがきつく、アジア勢からも日本株の処分売りが出ていた」という声が聞こえる。
東証1部の売買代金は3兆7587億円。値下がりは全体の97%で2050銘柄。ドンキ、イオンモールが上昇。ソフトバンク、任天堂が下落。「下げなきゃ株は上がれない」という思考法もある。
12日(金):
NY株式は連日の大幅安。NYダウは500ドル以上の下落。NASDAQも100ポイント近い下落。8月29日につけた終値の最高値を9.6%下回る水準。S&P500は6日続落で7月上旬の水準まで下落。「金利上昇を巡る懸念や企業決算への警戒感から売りが膨らんだ」との解釈だ。2月の「VIXショック再来」という声もある。
VIX(恐怖)指数は一時28.84まで上昇。その後前日比2ポイント高の24.98と2月12日以来の高水準だ。ただブラックスワン(SKEW)指数は127.65と連日低下している。
日経平均株価は103円高の22694円と3日ぶりの反発。昼休み時間中に発表された9月の中国貿易統計で、ドル建て輸出は前年比14.5%増と予想を上回る伸びになった。「米中貿易摩擦の影響が懸念されていたが、輸出が予想以上の伸びとなり、安心材料になった。日銀によるETF買いの思惑もあった」という見方だ。
日本株に対する環境がやや好転してきてのプラ転。「週末要因もありポジション調整で買い戻しも入った」という声も聞こえる。推定SQ値は22313円75銭を終始上回って推移し「下に幻のSQ」となった。
東証1部の売買3兆341 6億円。ソフトバンク、SUMCO、任天堂が上昇。ファーストリテ、三菱UFJ、武田薬が下落。
(2) 欧米動向
IMFの世界経済見通しは下方修正。
18年は0.2ポイント下方修正の3.7%。
トランプ政権が自動車関税を発動して報復合戦になれば世界景気は0.4%の下方修正になる。
最大では0.8%下方修正というシナリオもある。
中国は最悪1.6%の下方修正というシナリオもある。
そうなると中国の成長率は天安門事件の1990年以来の最悪のレベル。
もっとも成長していなかった日本はおかげで低成長のままのシナリオだが・・・。
米財務省の動き。
8月に成立した国防権限法(NDAA)。
ハイテクや通信など重要度が高いと見なす27業種を対象に外国企業の対米投資規制を強化する方針。
中国企業による対米投資を制限する狙いがあるとみられる。
今回規制強化の対象となった業種には通信や半導体、
エンジンとエンジン部品を含む航空機製造、アルミ生産、
ストレージ機器、誘導ミサイルなどの軍装備品が含まれている。
財務省によると、CFIUSは投資案件を30日以内に承認するか、
さらに踏み込んだ審査を行うかを判断することになる。
規制強化策は試験的に11月10日に導入され、1年以上実施される。
その間、恒久的な規制を準備することになる。
ムニューシン米財務長官の声明。
「この暫定的規制は米国の重要技術に固有のリスクに対応する」。
倫理面は別にして、投資規制の影響は大きい。
(3)アジア・新興国動向
先週の世界の株式相場は主要25株価指数のうち4指数が上昇。
上位1位トルコ週間騰落率1.87%、2位インド1.04%、3位ブラジル0.73%、
4位インドネシア0.43%、5位フィリピン▲1.04%。
下位25位中国▲7.60%、24位イタリア▲5.36%、23位フランス▲4.86%、
22位ドイツ▲4.86%、19位日本▲4.58%、14位米国▲4.18%。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
15日(月):米小売り売上高、NY連銀製造業景況感、
16日(火):首都圏新規マンション発売、シーテックジャパン(〜19日)、訪日外客数、米鉱工業生産、独ZEW景況感、中国生産者物価・消費者物価
17日(水):米住宅着工件数、EU首脳会議(オランダ)
18日(木):貿易統計、米CB景気先行指数、フィラデルフィア連銀製造業景況感
19日(金):消費者物価、中国各種経済指標
5日に開催された「成長戦略会議」。
送金規制の緩和とか定年65歳以上への引き上げばかりが報じられているが大切なのは成長戦略。
発表された「成長戦略の方向性(案)」では・・・。
「一人ひとりが生み出す付加価値を引き上げていく観点から、AI(人間で言えば脳に相当)、センサー(人間の目に 相当)、IoT(人間の神経系に相当)、ロボット(人間の筋肉に相当)といった第4次産業革命による技術革新について
中小企業を含む広範な生産現場への浸透を図るなど企業の前向きな設備投資を引き出す取組が必要。
(SDGs の達成に向けたSociety5.0の実現)」とある。
具体論では・・・。
「人生百年健康年齢」、「いつでもどこでもケア」、「誰でもキャッシュレス」、
「サステナブルで強いインフラ」、「移動弱者ゼロ」などがキーワード。
年末までに、中間的な報告を取りまとめ。
そして3つの3年間の工程表を含む実行計画を来年の夏までに閣議決定。
ここは外してはいけないだろう。
(兜町カタリスト 櫻井英明)