Eimei みちしるべ 2017年07月31日
《Eimei「みちしるべ」》
(7月31日から8月4日の週)
週末のNY市場で聞かれた言葉。
「「あまりも長く株高が続くと、良い指標にも悪い点を探り出そうとする傾向が出てくる。
現在の市場には、こうした雰囲気が感じられる」。
あるいは「悪材料視された雇用コスト指数はドル安相場を継続するための単なる口実だったに過ぎない」という指摘もある。
結果は決まっていてその方向の材料を発掘するのは市場の得意技でもある。
最近話題になり始めたのがROIC(投下資本利益率〉。
ROEと似ているようだが少し違う。
★ROIC(Return On Invested Capital)
【投下資本利益率】
企業が事業活動のために投じた資金を使って、どれだけ利益を生み出したかを示す指標。
ROIC=(営業利益×(1−実効税率))÷(株主資本+有利子負債)。
★ROE(Return On Equity)
【自己資本利益率】
企業の自己資本(株主資本)に対する当期純利益の割合。
ROE=当期純利益÷自己資本
またはROE=EPS(一株当たり利益)÷BPS(一株当たり純資産)。
日経ヴェリタスの5月15日号の特集は「今度の2万円は違う」。
以下はその中で「稼ぐ会社」でのランキング。
↓
【創出力】(前期の投下資本利益率)
1位スタートトゥデイ(3092)17年3月期63.4%
2位カカクコム(2371)42.4%
3位ミクシィ(2121)40.9%
4位日本M&Aセンター(2127)
5位アカツキ(3932)27.0%
6位ぐるなび(2440)26.2%
7位ベネフィット・ワン(2412)25.5%
8位エムスリー(2413)25.4%
9位マーベラス(7844)24.6%
10位大東建託(1878)24.0%
ちなみに米国株式市場の平均は11%程度。
対してFANG銘柄は16%程度とされる。
そのうち使われてくる指標と見る。
ちなみに米国市場のPBRは約3倍。
日本は約1.2倍。
この差は「明らかに目に見えるもの」を作っているかどうか。
何もものを生み出さない企業がアメリカでは多いからこの差となるのだろう。
ものつくり企業が多いのが特色だから致し方はないが、ものを作っても儲からないのが世界の常識。
だとしたら、少しは日本企業も方向転換が必要だ。
そして「収益の源泉はどこにあるのか」を社内外ともに問い続けることの必要性。
残念ながら財務指標とは異なり、トップの相場観とか未来思考、人間力なんてものは数値化できない。
しかし当面はAIに勝つために必要な事柄だろう。
内閣支持率の低下。
2015年7月も38%まで落ち込んだ。
しかし8月は46%まで反発。
16年5月に50%まで回復。
株価も上昇した。
気になるのはエール大学教授の浜田宏一氏の直近のコメント。
「消費増税延期は正解だった」。
これは19年の消費増税にもつながる伏線だろう。
「内閣改造などの処方箋と経済対策」なんて矮小なものではない。
脱デフレへの路線をどう再構築するのかが問われているのである。
決して加計とか破棄文書などを問うている訳ではない。
ココを履き違えては行けない局面。
週末の横浜市長選はほとんど話題にもならないが、通過すればIRとかカジノとか言い始めるに違いない。
日経平均想定レンジ
19856円(7月7日安値)〜20151円(7月SQ値)
経済指標や政治日程などのスケジュールを重要視する風潮は以前から株式市場にもあった。
しかし先物両替取引が登場してからはこのスケジュールが妙にクローズアップされてきた。
そして指標などの発表もスピーディーになった。
でも欠如し始めたのは想像力だろう。
スケジュールには異様に詳しいが、その意味を探るという風潮はなくなったような気がする。
「小売売上高の発表があるから気を付けましょう」。
そうではなくて、その結果の及ぼす影響についてのコメントというのはほとんどない。
あるいは、通過した指標はすぐに次の指標を待つ姿勢に取って代わられる。
条件反射的な筋肉ばかりが鍛えられ、脳がつかさどる想像の世界からは遠のいていく。
常に先のスケジュールを追うから相場に満足感はなく疲弊するばかり。
そろそろこのスケジュール重視主義からの脱却が必要なのではなかろうか。
投資シナリオを狭めることは良いことではない。
自由な投資哲学が登場しないと相場はますます自壊するような気がする。
少なくとも無味乾燥で時間の無駄に思える相場スケジュールの解説。
これがなくなれば「少しはフリーでフェアでグローバル」になれるに違いない。
(兜町カタリスト 櫻井英明)