話題レポート
《Eimei「みちしるべ」》
(3月18日から3月22日の週)
ようやくその論調が登場したか、というのが土曜日経朝刊。
見出しは「マイナス金利、経済冷やす?」。
ここ数年主張して事にようやく日の目が当たったという感じだ。
「マイナス金利ということは今日よりも明日の方がモノが安いということ。
だったら今日モノを買いますか。
今日より明日に消費が伸びるのなら、景気が良くなるはずはない。
今日より明日の方がモノが高いからこそ人はモノを買う。
だからマイナス金利で景気が回復する筈はない。
2016年11月9日にトランプ氏が米大統領選挙で当選。
その後株価は日米ともに急騰した。
だからトランプ相場などと言われる。
しかし見逃されていることは、同じ日に10年国債利回りがマイナスからプラスに転じたこと。
金利が生じて明日への期待が出たために株価は回復した」。
これが自分の論旨だった。
日経では賢そうに学説が持ち出されている。
米サマーズ氏らが唱えるのは「マイナス金利は銀行の貸し渋りを招き経済を冷やす」。
あるいはコロンビア大学のウリベ教授。
「継続すると表明した上で段階的に利上げをすると金利以上に物価が上がり物価を考慮した実質金利は低下。
経済にプラスになる」。
小枝早大教授は「16年9月に日銀が政策金利をマイナス0.1%からゼロに引き上げたと試算。
政策金利よりも物価が上がり実質金利が下がり景気を押し上げるという試算になる」。
マイナス金利が金融緩和を強化するという学説は1930年代の経済学者アービング・フィッシャー氏のもの。
もはや古色蒼然としていると言えるのではなかろうか。
日銀は金融緩和を継続するが、マイナス金利は排除するという金融政策を取ってみれば結論は出るのだろう。
しかし学説に固執する市場関係者の賛同を得られるとは思えない。
難しく考えるから、妙な論理がまかり通るのが経済学。
今日より明日の方がモノの値段が安い時に景気は良くなるのか。
市井のココロで考えれば結論は出ると思われる。
3月8日時点の信用買残は924億円増の2兆4616億円。
同信用売り残は103億円増の8870億円。
3月8日時点の裁定買い残は4064億円増の1兆1323億円。
同裁定売り残は3480億円増の7387億円。
どちらも2週連続の増加だが大幅増となった。
6月限だけだと買い残4068億円増の1兆884億円。
売り残5113億円増の6635億円。
売り残の翌限以降のポジションが1632億円減ったのが目に付く。
日経朝刊で興味深かったのは「市場展望」。
見出しは「配当落ちで1000億円の買い」。
配当が払い込まれる6月?7月初旬までの間、機関投資家は先物を買う。
その金額は「日経平均先物で1000億円」というのが論旨だ。
不可解なのは・・・。
TOPIX先物は6000億円とも言われているのに言及されていない。
日経だから日経平均に固執しTOPIXは触れないのかどうか。
明らかに金額の違うものを無視してはいけないだろう。
「配当落ちに伴う先物買い需要は合計で7000億円程度」。
1000億円とは大きく違う。
日経平均想定レンジ
下限20697円(13週線水準)〜上限21983円(200日線水準)
なんか腑に落ちないのは「低変動銘柄に資金逃避」の記事。
世界の低ボラティリティ株のETFに資金が流入しているのは事実だろう。
「相場全体に比べて値動きが小さく安定的に収益が稼げる可能性」があるETFだ。
「景気敏感株は来季業績下振れで相場変動が大きくなる」。
だから「低ボラ」。
頭では理解できる。
ただ「ひとまず低ボラティリティ銘柄に資金を待避させリスクを抑えている」。
本当にそうなのかどうかは運用者本人に聞いてみないとわからない。
下方修正2回目のしまむらは低ボラ?
薬品セクターは低ボラではなく新興市場のバイオ祭りの余得?
電鉄は「インバウンドからみで高収益?」。
何も低ボラを持ってこなくても材料はあるような気もするが・・・。
「低ボラ」というのが、たぶん高級そうで収まりが良いのだろう。
「株や投資家の世界を初歩から学ばなくてはならない市場関係者が多い」と老練な市場関係者。
現場を知らないから、空理空論が走り、相場の常識が歪むことを懸念しているのだろう。
例えば、コンプラという概念。
証券マンは一応金商法を読んでいるから、理解不理解はともかく「してはいけない」ことは熟知している。
しかし、それ以外だと意外と金商法すら知らないことはあろう。
よほど勉強好きでなければ、コンプラなんて自ら勉強しようとする姿勢はないだろう。
だからインサイダー取引なんて言うものが横行していた時期もあった。
証券マンであっても、銀行マン出身の証券マンのインサイダーが目立ったときもあった。
あるいは・・・。
相場を張る評論家というのは結構散見される。
市場も「言うだけの評論家よりも実戦している投資家の方の見方の方が役に立つ」と見る。
しかし「自分が今日売った銘柄を今日買い推奨」している姿は決して誉められるものではない。
ここの分別の有無が課題なのである。
確かにマスコミは金商法の範囲外ではある。
しかし、法的にはともかく道義的にはどうなのだろうか。
渾身の力で銘柄発掘をしているときに自分の保有銘柄が登場して目が濁らないものなのだろうか。
ここは結構疑問だ。
あるいは・・・。
高尚な学説に無条件に従う向きも多い。
しかし、現場ではそんなものはほとんど役に立たないことが多いもの。
「行き過ぎもまた相場」なのだが、これがなかなか理解されない。
あるいは「付いている株価は、常に正しい」というのも、難しいだろう。
株価はどう決まるのかというテクニカルな課題ですら、答えられない場合にも遭遇する。
寄り値を正確に言い当てることは至難の技と化してしまっている。
「常識で考えて変なことは、アルファベットやカタカナで語られてもおかしい」というのが正論。
横文字に誤魔化されると、本来の常識を逸脱した説も正しく見えてくるから厄介である。
重要なのは「要諦を心得る」ということ。
今の材料は何で、相場変動のコアは何なのか。
これが要諦。
しかし、地球を一巡りして、外のものに材料を見つけて高級感を醸し出すから見えなくなる。
何とも相場はややこしい。
知られているようで意外と知られないのが株の約定方法だろうか。
同じ株を同じ値段で売買注文を出してもできるときとできない時がある。
それは「板寄せ」方式と「ザラバ方式」に分かれるからだ。
寄り付きと引けは板寄せ方式だ。
板寄せとは証券取引所の売買成立方法。
相場が始まるときの始値を決める際などに使われる方式。
その時点で出されている注文をすべて「板」と呼ばれる注文控えに記載。
まず成行注文を優先し、次に高い買い注文と安い売り注文を突き合わせて、数量的に合致する値段(約定価格)を決めていく方法。
一方寄り後の相場の取引時間中(ザラ場)に、気配値をもとにそのつど取引を成立させていく方法を「ザラ場寄せ」と言う。
寄付と引けは売り買いの注文を集めて価格優先で付け合わせる。
ザラ場では、注文が来た順(時間優先)に、売り指し値は安いもの、買い指し値は高いものを優先して(価格優先)、個別に売買を成立させていく。
参加者が多く指し値注文が多いことを「板が厚い」、
少ない状況を「板が薄い」「板がない」などと言う。
板寄せ方式は、「特別気配(とくべつけはい)」が表示された時にも使われる。
特別気配は、決められている範囲を超えて株価が値動きする場合に表示される。
特別気配は表示されると、証券取引所は売買方式をザラバ方式から板寄せ方式に変更。
取引を即時に成立させないようにする。
昔は笛がなったが今は静かに「ト」とか「特」とか「S」などと表示されるだけなのが寂しい。
早朝の私鉄が女子高校生や中学生で溢れ始めた。
推察するに、行き先は東京ディズニーランド。
八丁堀で乗り換える人たちはいつもに増して多い。
朝から晩までディズニーランドという格好だ。
「試験休みと春休みはディズニー」という風潮なのだろうか。
アジア系は常にいるし、そこに女子学生が加わって満員御礼といった印象だ。
だから株価も昨年来高値を更新。
分割考慮後の上場来高値も更新した。
市場的には興味深いコメントもある。
「OLC株はドイツの金利が低下すると上昇する」という分析だ。
ECBドラギ総裁が景気の下振れリスクを指摘。
ドイツ金利低下の長期が高まったのは1月24日。
そこからのOLCの上昇率は14%。
TOPIXの上昇率3%をアウトパフォームしている。
世界で最も格付けの高いドイツ国債は典型的なバイ&ホールド資産。
ところが9年債まで利回りはマイナスで満期保有は損をする状態。
そこで債券の代替投資として低ボラのOLC株などに資金が向かうという指摘だ。
OLCの株価をTOPIXで割った相対株価とドイツ5年国債利回りを回帰分析。
過去10年の月次データでは「ドイツ金利が下がるとOLCの相対株価が上がる」という傾向。
ここまでややこしいことをしなくても、人の流れを見ていればOLCの上場来高値の説明は付く。
しかし何らかの数字的根拠や分析をありがたがるのが市場でもある。
(兜町カタリスト 櫻井英明)