話題レポート
《Eimei「みちしるべ」》
(7月16日から7月19日の週)
7月5日時点の信用買い残は551億円減の2兆1112億円。
2カ月ぶりの低水準。
10月19日の3兆1700億円、昨年3月23日の3兆6759億円。
夢の水準だった。
同信用売残は596億円増の9550億円。
1兆円を超えたのは3月22日の1兆636億円、9月21日の1兆673億円だった。
信用倍率は2.21倍に低下。
需給面からは裁定残の推移も合わせて「カラカラ」だ。
7月5日時点の裁定買い残は1072億円増の5125億円。
同裁定売り残は1290億円増の9583億円。
日経平均想定レンジ
下限21559円(7月1日安値)〜上限22362円(4月24日高値)
日経ヴェリタスでの市場関係者20人緊急アンケートは「7→12月の相場をどう見るか」。
個別では高値2万3500円(10→12月)、安値1万9000円(7→9月)。
あるいは高値2万2000円(7月)、2万円(11月)。
高値2万2000円(12月)、安値1万9000円(10月)。
年末に高値と見るのか、夏に高値を見るのか。
あるいは夏に安値と見るのか、秋に安値と見るのかが分岐点。
どれかは当たるだろう。
ただ年末高値と見るのは旧態依然としていて陳腐だ。
そして・・・。
天底を当てようとするからしばしば間違うのも株式市場のアノマリー。
マスコミの勝手な質問に答えるからこういう結果になるのかも知れない。
しかし天底を当てるのは神業というのに市場関係者は気が付かないのだろうか。
あるいは気がついても「どうせ当たらないし」とタカをくくっているのだろうか。
天底とタイミングが完璧に当たるのなら・・・。
わざわざアナリストとかストラレジストなんて仕事はしていないだろう。
というのが正直なところ。
「2千万円」問題が提起したことは結構大きい。
社会人向けに金融経済教育セミナーは大盛況。
インターネット証券のイデコとNISAの申込件数は報告書発表後に約2倍に増加。
産経では「これまで政府や金融業界がいくら貯蓄から資産形成へとキャンペーンを行っても、
投資や運用への理解はなかなか深まらなかった。2千万円をめぐる騒動は金融審による当初の想定とは違った経路とはいえ、国民の関心を資産形成へと向かわせるきっかけとなったことは金融業界にとって追い風となった」。
バラ色の夢を語ってきた証券業界にとっては、恐怖商法という180度違った姿勢での集客。
いずれにしても変なレポートではあった。
「まさに個人投資家の相場。老後2000万円不足話から個人の反攻が始まった」との声。
そして「上昇トレンドは下げ転換するまで上昇を続ける。わざわざ言われなくても、警戒材料がたくさんあるのは知っている。でも、転換するまで攻めるしかない。しかも、流れがある」。
これも名言。
日経ヴェリタスで紹介されたアノマリー。
【新経験則 四半期末の1週間は買い場(押し目買い)】
背景にあるのは、自社株買いの活発化。
多くの企業は四半期決算期末が近づくと、株価操縦とみなされるのを防ぐために自社株買いを自粛。
3月決算企業の四半期末に当たる3、6、9、12月末前の1週間(5営業日)について日経平均株価の騰落率。
14年6月末期以降、過去5年間では、全20回のうち16回で下落。
この16回のうち13回は翌月末にかけて日経平均が上昇。
過去5年間では、毎月の第1営業日に日経平均が上昇したのは約7割。
比較的高い確率になっている。
【変わる経験則 セル・イン・「エイプリル」】
「セル・イン・メイ(5月に売れ)」が広く知れ渡った結果、早めに売り抜けようとする人が増えた可能性も。
一方で「まだまだ現役の経験則」。
【米大統領選の前年は株高】日本でも選挙は好材料になりやすい。
年末と年始の相場の方向性は逆転することも不変の経験則。
不毛の手数料引き下げ競争をしているネット証券。
とうとう「米株売買、最低手数料なし」となってきた。
4日にマネが0.1ドルに引き下げ。
5日に楽天が0.01ドルに引き下げ。
8日にマネが0.01再引き下げ。
そしてSBIが最低手数料をゼロに引き下げる方針。
マネで取引する個人の約定件数の3割強は1回の取引が12万円未満。
外株の個人取引は小額が多いということだ。
「手数料引き下げは収益の影響の少ない領域で顧客を誘い込む宣伝広告効果」という声もある。
ただ・・・。
証券業は完全に装置産業になってきたことは否めない。
ココに相場観とか市場振興なんて思想は感じられない。
ただ生き残るために、ひたすら顧客拡大に励んでみても、そこに意思が薄い気がする。
20年前にあるネット証券を立ち上げた時の理想は「手数料自由化で顧客を囲い込み、圧倒的優位に立つ。
そして「他をふるい落としたときに手数料引き上げに向かう」だった。
正しかったのか間違っていたのかは不明。
しかし、20年経っても手数料引き下げ競争をしている業界。
自分の提供する商品にプライドというか誇りが感じられない。
ただ売ったり買ったりして貰えばそれでいいのかどうか。
自分の商品の値を下げて戦う世界に未来はあまり感じられない。
装置産業に徹するならば、レポートとか解説なんてむしろ邪魔。
肉を切らせて骨を断つなんて立派な方向でもなかろう。
投資家の経済合理性が増すことは悪くないのだが・・・。
証券業者にプライドというのはないのだろうか。
というか、他が下げるからうちも下げるでは芸がない。
最初からゼロにすれば良いだけのことだ。
投資家側としては見えない手数料をよく吟味することが必要になってくる。
もっとも・・・。
米国株に魅力を感じる投資家が増加しているという現実だけは否定のしようがない。
日本株に本当に魅力がないのかどうか。
自分たちの実収入の源泉であるフィールドを捨てて、マネーが海外でプレーさせるという現実。
メジャーリーグとNPBの関係みたいなものだろうか。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)。
環境や企業統治など考慮した「ESG投資」を増やしている。
2018年度末のESG投資資産残高は3.5兆円。
1年前の2.3倍に増えた。
全体の運用実績は約2.4兆円の黒字。
18年度の運用利回りは1.52%。
運用指標である1.92%%を下回った。
GPIFの18年度末時点の資産は159兆2154億円。
世界最大規模の機関投資家で資産の約半分を国内外の株式が占めている。
日本株を約40兆円保有する最大の投資家だ。
(兜町カタリスト 櫻井英明)