話題レポート
《Eimei「みちしるべ」》
(7月29から8月2日の週)
参院選は通過。
与党過半数で改憲勢力は3分の2に届かなかったという結果。
消費増税は信任されたとして、焦点は経済対策になってくるのだろう。
事前から指摘されていた関門は「貿易摩擦問題、円高トレンド」。
そもそも憲法改正は市場の材料にはほとんどならないもの。
だから、選挙通過で通商為替問題がクローズアップという見方なのだろう。
「政権の安定」は評価せずに、外の問題ばかりをクローズアップする思考法は変わっていない。
結局、市場が監視すべきは「実務がどれだけ進むか」ということ。
市場は理念で動く場所ではないので、これが一番重要となる。
興味深いのは参院選後に先送りされた「年金等に関する」財政検証。
そして「この先10年程度は消費増税はない」という首相の思考法。
それでは満足できないのが市場でもあるが・・・。
7月19日時点の信用買い残は288億円増の2兆1995億円。
同信用売残は226億円減の9288億円。
7月19日時点の裁定買い残は105億円減の4099億円。
2週連続減少。
同裁定売り残は224億円増の8803億円。
2週ぶり増加。
7月25日時点の日経平均採用銘柄のPERは12.12倍でEPSは1795.09円。
昨年12月13日の1794.09円を上回り過去最高値を更新。
26日時点での日経平均株価は25日線(21506円)からは0.7%、200日線(21501円)からは0.7%のプラスかい離。
25日線は下向きの200日線を上抜けた。
13週線(21358円)は26週線(21333円)を上抜いた。
52週線(21683円)も射程圏。
12ヶ月線(21702円)と24か月線(21836円)が欲しい。
勝手雲は31日に黒くねじれ5日に白くねじれている。
一目均衡の雲は8月19日に白くねじれ。
7月月足陽線基準は21729円。
8月は気学で「押し目買い、新高値が出れば大天井とみて駆け引きせよ」。
日経平均想定レンジ
下限21506円(25日線)〜上限22362円(4月24日高値)
興味深いのはJPモルガンのレポート。
「FOMCでの0.25%の利下げは織り込み済み。仮に0.5%の利下げなら多少はサプライズ。
市場が年3回の利下げを織り込むならば、ドル円は107円台半ばに下落。
利下げ1回でドル円は約2円の下落。3.5回の利下げを織り込むなら106円台半ばと計算できる」。
それだけ利下げしてもドル円が106円台だというなら怯える必要もないだろう。
「BAANGは新しいFANGだ」というそうだ。
BAANGはバリック・ゴールドやアングロ・ゴールドなどの金採掘業者株の頭文字。
大型ハイテクのFANGに変わる可能性があるということ。
ここに「幽霊の正体見たり枯れ尾花」の正体があるのではなかろうか。
株ではなく、金が上がることを優先する市場関係者を代弁するようなコメントである。
金採掘業者の株は6月以降アップルやFBなどの上昇率を上回っている。
「金が最善の投資先」と頑なに考える一部の人達にとって、金至上主義からは脱却はできないのだろう。
そういう偏った相場観測に惑わされてはいけない。
異端なのか正当なのかは不明だが、MMTがにわかに世界を席巻している。
マルクス風に言えば「一つの妖怪がヨーロッパにあらわれている。MMTの妖怪が」という感じだ。
「金融緩和よりも財政出動の方が景気対策としてはるかに有効」。
これは妙にスッと入る。
「政府の赤字は民間の黒字」。
「金融政策は資産バブルが警戒される。しかし財政政策は民間所得に働きかけ、債務レバレッジは存在しない」。
これも同様だ。
「事業機会に乏しい現代では、金融政策は株式など資産価格を押し上げるだけ。
物価や雇用への影響は限定的。それならば国民の所得を直接増やす財政政策の方が有効だ」。
所詮経済学は正解のない世界。
異端であろうと、正統であろうと、景気や経済が実際によくなるのならどちらでも悪くはない。
日露戦争の時に203高地を攻めあぐねていた参謀に児玉源太郎大将が言った言葉。
「諸君はきのうの専門家であるかもしれん。しかしあすの専門家ではない」。
今でも通用する言葉だ。
「参謀が、前線に行ったことがないということはどういうことだ」。
これも脳裏にとどまっている言葉だ。
このところのNY株の売買の低調さの裏側に、売買回転率の低下があるという。
NY株の売買回転率は4ー6月に1ー3月比18%減少したという。
これは過去最大の低下。
NYでほったらかし投資家が増えたとは思えないが・・・。
むしろ復調したとはいえ市場平均をアウトパフォームできないヘッジファンドが多いことの裏返し。
そう読んだ方がスッキリする。
ちなみに・・。
ヘッジファンド指数の1ー6月期のパフォーマンスは7.45。
09年以来10年ぶりの高水準だという。
しかし同時期のS&P500の上昇率は18.5%。
ヘッジファンド全体の2倍以上のパフォーマンスだ。
昔のようにヘッジファンドの見えない影など存在しないに等しい。
それでも名詞だけが独り歩きするから不思議な世界でもある。
《番外編》
「人生100年時代っていうけれど・・・」。
「2000万円なんて貯められるかな」という悩みが増えてきました。
しかし・・・。
2000万円というのは年収で500万円レベルの人たちの計算。
年収が1200万円を超えると7700万円が必要というのがニッセイ基礎研修所の試算。
「年金だけでは賄えないことはわかっていたけど」。
日経の見出しではありませんが「不都合な真実を直視する時」なのでしょう。
でも全く無理ではありません。
強みは時間を味方に付けていること。
目先だけを追うのではなく長い時間がかけられることはプライオリティです。
夢のようなベストシナリオを描いてみましょう。
まずは、コツコツ投資。
毎月積み立てで1万円でも2万円でも積み立てていくことで、少しはお金がたまります。
これは株価の上下というのは結構打ち消される投資法でしょう。
スタート1万円だったものが途中で2000円まで下がり10年後は5000円。
その時は合計100万円の投資が139万円になっています。
あるいは1万円だったものが途中で2000円まで下がり10年後は1万円。
この時合計100万円の元金は241万円と2.4倍です。
1万円から2万円まで10年間かけてずーっと上がるよりも、パフォーマンスはいいのです。
味噌はコツコツ毎月積み立てるということ。
相場動向に左右されず、とにかく地道に積み立てましょう。
株価が下がれば口数が増えるのですから、それを楽しみにしましょう。
次は「72の法則」の実践です。
例えばREIT。
分配金利回りは平均で年4%近いですから複利計算では18年で元金は倍になります。
36年の時間をかければ元金は4倍です。
100万円は400万円。
200万円は800万円になります。
もうひとつは株式投資。
テンバガー(10倍株)は難しくてもダブルバガー(2倍株)やトリプルバガー(3倍株)はたくさんあります。
都合の良い計算をすれば・・・。
元金50万円が年に1回ダブルバガーで100万円。
2度目のダブルバガーで200万円。
3度目のダブルバガーで400万円。
4度目のダブルバガーで800万円。
そのうち500万円はREITにして4%の分配金利回りの複利投資で18年後には1000万円。
これだけでも36年後には2000万円になります。
残った300万円は必死にダブルバガー銘柄を探して600万円に。
合わせて1600万円。
この間に積立てた100万円が2倍になっていれば200万円。
合わせて1800万円。
約20年で50万円を2000万円にすることは理論的にはそんなに難しくはありません。
20年で40倍というと気が遠くなりますが、やはりコツコツ。
最初の5年で2倍株をうまく見つけられるかどうかが分かれ道という感じです。
年に4回配当をくれる株なんかも投資対象にすると良いかも知れません。
この寓話が成り立つ最低条件はデフレが続きインフレが来ないこと。
物価の上昇さえなければ2000万円は今の価値。
もしも物価の上昇があると、2000万円という数字の根拠はすべて失われてしまいます。
言うまでもありませんが、損をするという概念はここから除かれていますが・・・。
(兜町カタリスト 櫻井英明)