Eimei みちしるべ 2015年12月14日
《Eimei「みちしるべ」》
(12月14日から12月18日の週)
ミシガン大学消費者信頼感指数は91.8で前月の91.3から上昇した。
市場予想の92.0にはとどかなかったが消費者の主な家庭用品に対する購買意欲は2005年以来の強さ。
しかも12月の景気現況指数は107.0で予想の103.5を上回っている。
しかしこれは見えないふり。
米原油先物1バレル=35ドル台に下落。
背景は国際エネルギー機関(IEA)が、年明けには供給過剰が悪化する可能性があるとした報告。
そして人民元は中国景気の減退を背景に4年半ぶりの安値。
とってつけたような材料だが、見えないふりではなくなった。
加えて「米国の利上げに対する警戒感も強まり、市場心理の重し」との解釈。
ついこの間までは「利上げ賛同」だったマスコミ論調の七変化なのだろうか。
ダウとデュポンの下落の影響も大きかったとも言われる。
しかしこれは表の材料。
矢面に立つ材料は概ね一過性のものであり、さしたる意味はないことも多い。
むしろ、表面上の売り材料の傍らにいるのが米規制当局と金融機関の長い戦い。
リーマンショック以降、材料の背景に隠れているこの規制とのバトルはあまり指摘されない。
週末は米証券取引委員会(SEC)が2つの規制案を発表した。
一つはファンドのデリバティブ(金融派生商品)利用を制限する規制案。
これはファンドに対し、デリバティブでの損失をカバーするための手元資金の保持を求める内容。
ファンドは、デリバティ運用を純資産の150%までに制限するとされる。
これに対する解釈は「新たな規制が導入されれば、多数の人気ETFが機能しなくなる可能性」。
SECの提案が通過した場合、ETFはレバレッジを低下させるか、ファンドの閉鎖、
または投資家に魅力的に映らない異なるストラクチャーへの変更を余儀なくされるとの解釈。
市場が暴れ抵抗する案に見えてならない。
SECのもうひとつの案は石油やガス、鉱業各社に外国政府への支払い内容の開示を義務付ける規制。
外国政府への納税や採掘権料など、資源の探査や採取などに関する各種料金の支払額の開示を義務付ける内容。
背景は「資源国の汚職と闘う上で有力な手段「との解釈。
エネルギー業界各社は、重要な財務情報を公にすると外国の競合相手を利することになりかねないとの考え。
金融も資源もがんじがらめを嫌う場所。
だから週末のNY株は資源セクター中心に下落したと考えた方が精神衛生上はよさそうな気がする。
材料の吟味や上昇下落の背景を探ることはもちろん重要な作業である。
しかし大切なことは他人の解釈や活字・映像の解釈を疑うこと。
マスコミ解釈は日々七変化。
金利の問題や景気の問題、あるいは政治情勢など有象無象のものが登場するのが相場。
しかしいつも底流にあるのは金融規制当局と金融機関の抵抗のバトルであるということ。
ここを押さえておくと風景は少し変わって見えることもある。
金融市場の問題での株安の傍証。
一つは高利回りの低格付け社債(ハイイールド債)を運用していたヘッジファンド。
「サード・アベニュー・フォーカスド・クレジット・ファンド」が償還不能・清算に追い込まれたという話。
運用会社のCEOが辞任したと報じられている。
同じく高リスク資産を運用していた「ストーン・ライオン・キャピタル・パートナーズ」というファンドも償還停止との報道。
著しく規模が大きいファンドではないようですが、突然の償還停止はリーマンショック以来のこと。
市場心理に与える影響は少なくないのでしょう。
大和のレポートでは・・・。
「米国では7億8800万ドル(約958億円)相当の資産を運用する投資信託
(サード・アベニュー・フォーカスト・クレジット・ファンド)が、顧客の解約申し込みを停止した。
運用対象であるハイイールド債・ジャンク債の流動性が低下している中で、資産の投げ売りを回避するための処置。
かつてリーマン・ショックに向けて同様の現象が2007年8月9日に発生した(パリバ・ショック)。
1週間強で為替レートは8円/ドル以上の円高となり、米国10年債利回りは0.22%の利回り低下。
日経平均は2000円以上、NYダウは1000ドル以上の下落(ザラ場ベース)となった。
その後の大事に至る兆候であるか否かは、今週のマーケットの反応を見る必要がある。
一部のヘッジファンド(Stone Lion Capital Partners)も換金停止処置をとったと報じられている。
こうした金融システムに連鎖が広がるかも重要。
この流れていけばFRBの判断が重要との話。
ひょっとして利上げはこの問題で延期になるとすれば、このところの下げは理解できる。
しかし利上げ延期の可能性は5%程度なのだろうが・・・。
日経平均想定レンジ
下限18743円(75日線水準)〜上限19811円(12月7日窓開け水準)
以下は日経元旦朝刊の見出し。
ここに相場の流れのヒントがあったように思える。
06年「強い日本の復活」
07年「富が目覚め経済まわす」
08年「沈む国と通貨の物語」
09年「危機が生む未来」
10年「成長へ眠る力引き出す」=基本テーマは変らない
11年「先例なき時代に立つ」
12年「開かれる知、つながる力」の意味=「C世代を駆け抜ける」。
・・・その「C」はComputer、Connected、Community、Change、Create。
13年「5割経済圏:アジアに跳ぶ」
14年「空恐ろしさを豊かさに」
15年「変えるのはあなた」
年始恒例の連載テーマ「リアルの逆襲」
少し長い視点でみれば、2017年4月の消費税増税が気にかかる。
もし増税ならば昨年同様の軟調さもあるだろう。
しかし衆参同時選挙で「消費増税延期を問う」などでも登場してくれれば来年も安泰なのだろう。
来年6月には消費税動向も決まっているだろう。
日経平均大幅下落の中で前場逆行高銘柄はインフォテリア(3853)、カイオム(4583)。
長らく追い続けた銘柄だから個別では明るい面もあるのだが・・・。
(兜町カタリスト 櫻井英明)
(12月14日から12月18日の週)
ミシガン大学消費者信頼感指数は91.8で前月の91.3から上昇した。
市場予想の92.0にはとどかなかったが消費者の主な家庭用品に対する購買意欲は2005年以来の強さ。
しかも12月の景気現況指数は107.0で予想の103.5を上回っている。
しかしこれは見えないふり。
米原油先物1バレル=35ドル台に下落。
背景は国際エネルギー機関(IEA)が、年明けには供給過剰が悪化する可能性があるとした報告。
そして人民元は中国景気の減退を背景に4年半ぶりの安値。
とってつけたような材料だが、見えないふりではなくなった。
加えて「米国の利上げに対する警戒感も強まり、市場心理の重し」との解釈。
ついこの間までは「利上げ賛同」だったマスコミ論調の七変化なのだろうか。
ダウとデュポンの下落の影響も大きかったとも言われる。
しかしこれは表の材料。
矢面に立つ材料は概ね一過性のものであり、さしたる意味はないことも多い。
むしろ、表面上の売り材料の傍らにいるのが米規制当局と金融機関の長い戦い。
リーマンショック以降、材料の背景に隠れているこの規制とのバトルはあまり指摘されない。
週末は米証券取引委員会(SEC)が2つの規制案を発表した。
一つはファンドのデリバティブ(金融派生商品)利用を制限する規制案。
これはファンドに対し、デリバティブでの損失をカバーするための手元資金の保持を求める内容。
ファンドは、デリバティ運用を純資産の150%までに制限するとされる。
これに対する解釈は「新たな規制が導入されれば、多数の人気ETFが機能しなくなる可能性」。
SECの提案が通過した場合、ETFはレバレッジを低下させるか、ファンドの閉鎖、
または投資家に魅力的に映らない異なるストラクチャーへの変更を余儀なくされるとの解釈。
市場が暴れ抵抗する案に見えてならない。
SECのもうひとつの案は石油やガス、鉱業各社に外国政府への支払い内容の開示を義務付ける規制。
外国政府への納税や採掘権料など、資源の探査や採取などに関する各種料金の支払額の開示を義務付ける内容。
背景は「資源国の汚職と闘う上で有力な手段「との解釈。
エネルギー業界各社は、重要な財務情報を公にすると外国の競合相手を利することになりかねないとの考え。
金融も資源もがんじがらめを嫌う場所。
だから週末のNY株は資源セクター中心に下落したと考えた方が精神衛生上はよさそうな気がする。
材料の吟味や上昇下落の背景を探ることはもちろん重要な作業である。
しかし大切なことは他人の解釈や活字・映像の解釈を疑うこと。
マスコミ解釈は日々七変化。
金利の問題や景気の問題、あるいは政治情勢など有象無象のものが登場するのが相場。
しかしいつも底流にあるのは金融規制当局と金融機関の抵抗のバトルであるということ。
ここを押さえておくと風景は少し変わって見えることもある。
金融市場の問題での株安の傍証。
一つは高利回りの低格付け社債(ハイイールド債)を運用していたヘッジファンド。
「サード・アベニュー・フォーカスド・クレジット・ファンド」が償還不能・清算に追い込まれたという話。
運用会社のCEOが辞任したと報じられている。
同じく高リスク資産を運用していた「ストーン・ライオン・キャピタル・パートナーズ」というファンドも償還停止との報道。
著しく規模が大きいファンドではないようですが、突然の償還停止はリーマンショック以来のこと。
市場心理に与える影響は少なくないのでしょう。
大和のレポートでは・・・。
「米国では7億8800万ドル(約958億円)相当の資産を運用する投資信託
(サード・アベニュー・フォーカスト・クレジット・ファンド)が、顧客の解約申し込みを停止した。
運用対象であるハイイールド債・ジャンク債の流動性が低下している中で、資産の投げ売りを回避するための処置。
かつてリーマン・ショックに向けて同様の現象が2007年8月9日に発生した(パリバ・ショック)。
1週間強で為替レートは8円/ドル以上の円高となり、米国10年債利回りは0.22%の利回り低下。
日経平均は2000円以上、NYダウは1000ドル以上の下落(ザラ場ベース)となった。
その後の大事に至る兆候であるか否かは、今週のマーケットの反応を見る必要がある。
一部のヘッジファンド(Stone Lion Capital Partners)も換金停止処置をとったと報じられている。
こうした金融システムに連鎖が広がるかも重要。
この流れていけばFRBの判断が重要との話。
ひょっとして利上げはこの問題で延期になるとすれば、このところの下げは理解できる。
しかし利上げ延期の可能性は5%程度なのだろうが・・・。
日経平均想定レンジ
下限18743円(75日線水準)〜上限19811円(12月7日窓開け水準)
以下は日経元旦朝刊の見出し。
ここに相場の流れのヒントがあったように思える。
06年「強い日本の復活」
07年「富が目覚め経済まわす」
08年「沈む国と通貨の物語」
09年「危機が生む未来」
10年「成長へ眠る力引き出す」=基本テーマは変らない
11年「先例なき時代に立つ」
12年「開かれる知、つながる力」の意味=「C世代を駆け抜ける」。
・・・その「C」はComputer、Connected、Community、Change、Create。
13年「5割経済圏:アジアに跳ぶ」
14年「空恐ろしさを豊かさに」
15年「変えるのはあなた」
年始恒例の連載テーマ「リアルの逆襲」
少し長い視点でみれば、2017年4月の消費税増税が気にかかる。
もし増税ならば昨年同様の軟調さもあるだろう。
しかし衆参同時選挙で「消費増税延期を問う」などでも登場してくれれば来年も安泰なのだろう。
来年6月には消費税動向も決まっているだろう。
日経平均大幅下落の中で前場逆行高銘柄はインフォテリア(3853)、カイオム(4583)。
長らく追い続けた銘柄だから個別では明るい面もあるのだが・・・。
(兜町カタリスト 櫻井英明)