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2015年10月26日
年末調整はマイナンバー対応!
年末調整とは何ですか?
確定申告は個人が自分で収入や経費、所得や税金の計算をして納税をします。

一方、年末調整は雇用主が従業員の一年間の給与から税金を計算し、すでに給与から天引きしている所得税額の合計額から精算することで納税が完結する仕組みをいいます。

したがって、サラリーマンの多くは年末調整で納税が完結しますので、確定申告をする必要はありません。

ここで、「なぜ毎月税金を天引きしているのに、あらためて年末に計算をする必要があるの?」と疑問を抱く方もいるでしょう。

なぜかといえば、ほとんどの場合、天引きした所得税額の合計額はその人が本来納付しなければならない所得税額と一致しないからです。

たとえば毎月天引きをする所得税額は、年の途中で扶養家族が増減してもそれ以前の月に遡って修正しません。また、生命保険料や損害保険料などの控除額は毎月の天引きの際に全く考慮されないのです。

したがって、毎月天引きされていた所得税額はあくまで”概算”にすぎず、年末に計算をし直して精算をする必要があるのです。

今年の年末調整はマイナンバー対応!

マイナンバーの国民1人1人への通知が平成27年10月5日からスタートします。このマイナンバーの利用開始は平成28年1月からとされています。平成28年1月以降支払う給与や報酬については、源泉徴収票や支払調書にはマイナンバーを記載しなければなりません。

そのため、今年の年末調整時(平成28年分扶養控除等申告書の提出時)に、従業員とその扶養家族のマイナンバーを集めるという作業が必要になるのです。

会社員にとっての「簡易版確定申告」とも言うべき年末調整。

これは所得税などに関係する手続きなので、税制にも適用されるマイナンバー制度と密接に関わってきます。

ここでは制度導入にあたって年末調整に加わる変更や注意点について解説します。

新たにマイナンバーが必要になる書類とは?
書類名変更点・注意事項
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書マイナンバーの記載が必要。
自分と扶養家族のマイナンバーの記載が必要。
配偶者特別控除申告書マイナンバーの記載が必要。
保険料控除申告書と同じ用紙に記入。
保険料控除申告書マイナンバーの記載が必要。
保険料控除申告書と同じ用紙に記入。
住宅借入金等特別控除申告書マイナンバーの記載が必要。
実務上はこれまでと取り扱いに変更なし。

まず、今年(平成27年)の年末調整における、扶養控除等申告書、保険料控除申告書、配偶者特別控除申告書等については、個人番号、法人番号の記載は不要です。平成28年分の申告書から新様式にて個人番号、法人番号の記載が必要となります。つまり、平成28年1月に提出してもらう扶養控除等申告書については、新様式にて番号の記載が必要になるということです。

年末調整には上図の4つの書類が必要です。以下ではそれぞれについてマイナンバー制度導入にあたって変更や注意すべき点があるのかについて説明します。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」。

配偶者控除や扶養控除、障害者控除などの控除を受けるための書類で、氏名や続柄、その年の間の所得の見積額などを記入します。

マイナンバー制度が導入されるとこの書類にはマイナンバーの記入欄が設けられ、自分のマイナンバー以外にも扶養親族のマイナンバーの記載が必要です。

配偶者特別控除申告書
配偶者特別控除を受けるため必要な書類。配偶者の氏名をはじめ、給与所得や事業所得など所得の内訳を記入し、自分で配偶者特別控除額までを記入する書類です。マイナンバー制度が導入されると、この書類にもマイナンバーの記載が必要になります。

保険料控除申告書
保険料控除申告書は先ほどの配偶者特別控除申告書と一緒になっており、「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」の右側が保険料控除申告書です。同じくマイナンバー制度の導入でマイナンバーの記載が必要になります。

住宅借入金等特別控除申告書
年末調整の書類で唯一マイナンバーの記載が要らない書類が「住宅借入金等特別控除申告書」です。住宅借入金等特別控除を受けるために必要な書類となります。マイナンバー制度導入後も年末調整に必要な書類には含まれますが、実務上は事業者も従業員もこれまでと同じ取り扱いで問題ありません。

■年末調整での注意点
本人確認の方法
マイナンバーを従業員から取得する際には必ず本人確認(=番号確認+身元確認)が必要です。マイナンバーが記載されている個人番号カード(番号確認+身元確認)や、通知カード(番号確認)と運転免許証など(身元確認)を併用することで行います。

年末調整書類の場合もこれは同じですが、扶養控除等申告書の提出の際の扶養親族の本人確認は、扶養者である従業員が行うこととされています。

事業者の監督責任
例えば扶養控除等申告書に扶養親族のマイナンバーを記入し、それを扶養者である従業員が通勤途中に紛失、マイナンバーが漏えいしたとします。これによってもし扶養親族に不利益が発生しても、事業者は監督責任を問われません。

マイナンバー関連事務を委託業者に委託する時、事業者には委託先が適切にマイナンバーを取り扱っているかを監督する義務があります。これと同じように「扶養控除等申告書に記載するマイナンバーを扶養親族から取得し、記載する」というマイナンバー関連事務を事業者が従業員に委託した、と考えるとマイナンバー漏えいの責任は事業者にあることになるのです。しかし、マイナンバー制度上ではこの時の事業者と従業員の関係は「委託」には当たりません。したがって監督義務も生じない、と考えます。

(マネーフォワード参照:Eimei.TVが作成)

■年末調整のしかた

[平成27年4月1日現在法令等]

会社など給与の支払者は、役員又は使用人に対して給与を支払う際に所得税及び復興特別所得税の源泉徴収を行っています。

しかし、その年1年間に給与から源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税の合計額は、必ずしもその人が1年間に納めるべき税額とはなりません。

このため、1年間に源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税の合計額と1年間に納めるべき所得税及び復興特別所得税額を一致させる必要があります。

この手続を年末調整といいます。

年末調整は、その人に1年間に支払うべきことが確定した給与の額を合計して、次の順序で行います。

[1] その年の1月1日から12月31日までの間に支払うべきことが確定した給与の合計額から給与所得控除後の給与の額を求めます。給与所得控除後の給与の額は、「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」で求めます。

[2] 給与所得控除後の給与の額から扶養控除などの所得控除を差し引きます。

[3] この所得控除を差し引いた金額(1,000円未満切捨て)に、所得税の税率を当てはめて税額を求めます。

[4] 年末調整で住宅借入金等特別控除を行う場合には、この控除額を税額から差し引きます。

[5] この控除額を差し引いた税額に102.1%をかけた税額(100円未満切捨て)が、その人が1年間に納めるべき所得税及び復興特別所得税になります。

[6] 源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税の合計額が1年間に納めるべき所得税及び復興特別所得税額より多い場合には、その差額の税額を還付します。

逆に、源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税の合計額が1年間に納めるべき所得税及び復興特別所得税額より少ない場合には、その差額の税額を徴収します。

年末調整の対象となる人は、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している人です。

ただし、2,000万円を超える給与の支払を受ける人は、年末調整の対象になりません。

(国税庁HPを参照)
(所法190〜192、194、同別表第5、措法41の2の2、復興財確法30)

簡単ですが、今回は、年末調整の仕組みについてご説明しました。マイナンバー制度と密接に関わってきます。

マインナンバーによって様々な面で便利になるといわれていますが、一方で「税と社会保障に関するさまざまな情報がその番号によって詰まっている」ということはよく認識しておきましょう。
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