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「コーポレートガバナンス・コード」は持続的な経済成長のテコ
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■「コーポレートガバナンス・コード」に秘められた狙い

 「コーポレートガバナンス・コード」――この6月1日から施行されている。推進役は金融庁、東京証券取引所である。株主総会シーズンに先駆けて導入された。

おそらく、上場企業各社の株主総会で、このタームが飛び交うことになると想定される。

タームが飛び交うことはそれほど重要なことではない――。法的な拘束力はない。

だが、マーケットの「デファクト」あるいは「デファクトスタンダード」としての拘束力はある・・・。

おそらく、このデファクトな拘束力は、比重を極限まで高めることになる可能性を持っている。企業としては、無視できないどころか、拘束されることを覚悟する必要がある。

アベノミクス――、いまはあまり取りざたされることはない。だが、この「コーポレートガバナンス・コード」導入は、アベノミクスの一環とみるべきである。

 いわば、「隠れアベノミクス」ともいえるもので、経済の成長戦略の一手とみてよいだろう。

経済の成長戦略を担うのは企業である。その企業を「改革」する。改革により、企業成長を引き出し、成長の阻害要因を取り除く。そうした戦略でテコ入れし、持続的な経済成長を促進する。

■「スチュワードシップ・コード」――すでにROE改善などで提案済み

金融庁がつくり、すでに生保・信託銀行など機関投資家が実行している「(日本版)スチュワードシップ・コード」というものがある。これもデファクトだが、拘束力は存分にみせつつある。

例えば、生保・信託銀行が投資先企業に「ROE(自己資本利益率)を10%に改善してほしい」と提案したとする。そうしなければ、投資先企業から外すということになりかねない。

「大株主に去られたら困る」。企業としては、「モノを言う株主」の提案に沿った経営を行うしかない。

「スチュワード」とは、中世の荘園の管理者=執事から由来しているとのことだ。日本でいえば、「地頭」といったところか。機関投資家は、企業や個人からおカネを集めて、「執事」としておカネを有望な上場企業に投資する。

「スチュワードシップ・コード」とは、機関投資家が投資先企業に要望するコード=行動規約といったところか。こうしたことにより、企業の資本効率・ROEなど経営行動が厳しくチェックにさらされるという状況に変化している。

■コーポレートガバナンスの有無が投資尺度になる

それに対して「コーポレートガバナンス・コード」は、投資される企業サイドの行動規約になる。企業経営の透明性を高めることで、機関投資家、あるいは個人投資家の信頼を高めて、企業への投資を促進する。

コーポレートガバナンスの有無が、投資家サイドの投資尺度となる。

「当社はコーポレートガバナンスが確立されているから安心して投資してくれ」、「企業経営の透明性が確保されており、不祥事などを隠したりしないので投資してほしい」といった投資基準・投資尺度になる。

「コーポレートガバナンス・コード」、さらに先行して実施された「スチュワードシップ・コード」とも市場主義による企業改革にほかならない。

アベノミクス、いや「隠れアベノミクス」は、マーケットの力をフルに活用して企業改革を進める。それにより日本に持続的な経済成長をもたらすという戦略とみてよいと思われる。

■「コーポレートガバナンス・コード」は経済の持続的成長のテコか

日本企業にコーポレートガバナンスが欠如しているのは、残念ながら一般的に認める必要があるに違いない。

経営者が執行して自分で評価する。経営の執行とその評価が分離していない。
権力の分散=チェック&バランスがない。悪くいえば、経営の執行がお手盛りの評価で終わる。

野球で言えば、選手と審判を兼任しているようなシステムである。したがって、下手をすると何があっても「オールセーフ」、「推定責任なし」でひたすら資本効率を低下させかねない。

「社外取締役」にしても、社外から持ってきたのだから「独立役員」だなどといった形態だけのものを強弁する企業がみられないではない。チェック&バランスなど無関係――。

「コーポレートガバナンス・コード」は、日本企業が本気でコーポレートガバナンスに直面する契機になることは確実といってよい。

そして、市場主義による企業改革は、経済成長を促し、少なくても株式市場にはプラスファクターに転じるということになるのではないか。

(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media−IR)