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佐々木敦也の経済千思万考

第7号 佐々木敦也の経済千思万考

【スイス・ショック:中央銀行への信頼失墜の序曲か?】   2015.1.19

「スイス国立銀行(中央銀行)が1月15日、スイス・フラン高阻止のために2011年9月に導入した対ユーロでのフラン相場上限を突然撤廃し、為替市場は大混乱に陥った。欧州中央銀行(ECB)が今月22日にも追加金融緩和策に踏み切るとみられる中、これ以上のフラン買い・ユーロ売り圧力には抗し切れないと、ECBの決定を待たずに白旗を掲げてしまった形である。

スイス中銀が1ユーロ=1.20フランの上限維持のために繰り返したフラン売り・ユーロ買いの市場介入の結果、同中銀の外貨準備は約5000億フラン(約69兆円)と、スイスの国内総生産(GDP)の7割まで膨張。フラン高による為替差損で、同中銀は15年に赤字に陥るとの予測も出ている。
ECBが追加緩和を決断し、ユーロ安圧力がさらに強まれば、スイス中銀は一段の介入を迫られる。同中銀のヨルダン総裁は地元紙のインタビューで、「長期的に金融政策がコントロールできなくなる恐れがあった」と、介入が限界に達していたことを認めた。

上限撤廃が発表されると、フラン相場は一時、対ユーロで約30%急騰。スイス時計大手スウォッチのハイエク最高経営責任者(CEO)が、上限撤廃を「津波だ」と嘆くなど、急激なフラン高に輸出産業から悲鳴が上がった。唐突な決定に対しては、国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事も米CNBテレビで、「事前連絡がなかったのは驚き」と苦言。そして、対フランでユーロやドルが売られる中、円高が進んだ。JPモルガン・チェースのグローバル為替ボラティリティ指数は一時前日比18%高の11.59と13年6月以来の水準まで上昇。上昇率は08年10月以降で最大となった。金融市場の混乱に伴って世界的に投資家のリスク回避姿勢が強まり、安全資産とされる円や日本国債にも買いが集まったのである。」

まず例によって基本知識だ。スイス・フランの上限とは何か。それはフラン高を抑えるため、スイス中銀が1ユーロ=1.20フランの上限とする2011年9月に導入した通貨政策である。当時は欧州債務危機の最中で、永世中立国であるスイスのフランは欧州内の投資資金の逃避先となっていた。スイスは高級時計の輸出大国であると同時に観光立国でもある。これら国内の輸出産業を中心に国内経済を支えることで産業への影響を回避するため、スイス中銀はフランを売りユーロを買う為替介入を続けてきた。 そして今回突然その上限を撤廃した理由は、ユーロ圏ではデフレ懸念が強まっており、欧州中央銀行(ECB)は今月内にも国債を買い入れる量的金融緩和に踏み切るものと見込まれている。そうなればユーロ相場の下落となり、スイス中銀が保有するユーロの含み損がさらに膨らむ懸念があった。このため、スイス中銀がこれ以上の為替介入を断念したものとみられている。

今回のスイス中銀決定の持つ重大な意味は何であろうか?それは、金融政策は万能ではないということ、すなわち、金融政策が持つリスクの露呈である。スイス・ショックは金融政策が期待通りの効果を発揮できるとは限らないというリスクを、改めて市場や投資家に認識させることになった。
もし、「中央銀行が実施する量的緩和や為替介入が期待通りの効果を、長い期間にわたって発揮できるとは限らない」という政策効果に対する信頼の失墜がこのスイス・ショックを機に世界の市場や投資家の間に広まるようだと、今後、世界的に株価や為替レートの価格変動・ボラティリティはさらに高まりやすくなると考えるべきだろう。

原油安にスイス・フランの急変。荒れる世界市場でさて次はどの市場に現れるか。もはや景気理論だけでは説明のつかない水準まで買われている先進国の債券市場は要注意だ。わが日本において、日銀の緩和策や国債買いで市場には「債券は下がらない」という思い込みも強い。金融政策には予め決められた展開も、期待された効果が表れる保証もないのだ。市場関係者や投資家においては、日銀の金融政策が期待された効果を発揮できず、反動として円高や株安などが進む不確実性・リスクは上昇している、とみるのがスイス・ショックの教訓として深く認識しておいた方がいい。

さらに重要なことは、これを機にビットコインに代表される仮想通貨の進展が確実に進むことになるだろうということだ。世界の銀行にとって外国為替業務は、全世界の貿易量1500兆円に対し手数料4%の60兆円を稼いでいるビジネスである。しかし、ビットコインの貿易決済通貨として利用度が増して、銀行の割高な手数料を大きく浸食してくれば、その打撃は計り知れないものとなる可能性がある。
以上

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