話題レポート
《Eimei「みちしるべ」》
(3月25日から3月29日の週)
週末のNY株式市場は急落。
主要3指数の下落率は1月3日以来の大きさとなった。
3月の米製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値は52.5。
2017年6月以来約2年ぶりの水準に落ち込んだ。
サービスPMIも54.8に低下し、ともに市場予想を下回った。
これを受けて3カ月物TB利回りは2.4527%、10年債利回り2.4373%。
2007年以来約12年ぶりに長短利回りが逆転したことを嫌気したとの解釈。
「長短金利の逆転は景気後退入りの兆候」という見方だ。
ただ「長短金利が逆転し後の株価下落は6カ月?2年後」という声も聞こえる。
実際はFOMC通過後の不透明感が漂ったところにイギリスのEU離脱への警戒が加わったというところだろう。
3月のドイツの製造業PMI速報値は44.7。
判断の分かれ目となる50を3カ月連続で割り込、12年8月以来の低水準。
これを受けた欧州株安も響いたようだ。
上昇下落の材料を毎日探さなければならないから解釈はしばしば間違うものでもある。
25日線(21439円)からは0.9%のプラスかい離。
200日線(21966円)からは1.5%のマイナスかい離。
5日線は21567円。
75日線(21050円)でまた微妙に右下がり。
週足の一目均衡の雲の下限が22171円。上限が22535円。
日足の勝手雲は金曜に黒くねじれたが薄い。
週足の勝手雲は上限21968円、下限20392円。
25日線が21439円。
月末・期末の週。
月足陽線基準(21602)と昨年3月月中平均(21395円)が欲しい週。
今週の行方が今年を決める方向。
水曜の配当権利落ち分は日経平均で172円、TOPIXで17円。
東証1部加重平均利回りは2.3%水準。
12月の株価急落時には2.67%台まで上昇していた。
昨年9月は2.02%。
明らかに配当は増えている。
日経平均想定レンジ
下限20810円(13週線水準)〜上限21966円(200日線水準)
木曜日経朝刊トップの見出しは「世界株主還元10年で2倍」。
配当と自社株買いの合計額は2018年度に過去最高の2兆3786億ドル。
約265兆円は2008年度の2倍の見通しだ。
「金融緩和で資金が大量に出回っているところに企業がさらに還元を通じてお金を資本市場に配分。金余りを増幅している」という見方だ。
世界のGDPは約80兆ドル。
株主還元額はその3%に当たる。
10年前は2%弱。
設備投資があまり必要ないデジタル経済への移行も背景だという。
金余りが間違いないのなら企業が援軍となってのバブル化経済だってやってこないとも限らない。
ひそかな萌芽と見ることもできるだろう。
このところの話題は「東証1部」の問題。
プレミア市場を創生するとか、東証1部上場銘柄を絞り込む、とか議論が喧しい。
東証1部は優良企業と小粒で低収益な企業が混在する「玉石混交」の状態。
1部市場の上場企業数を絞り込むのは、優良企業にマネーを誘導する狙い。
などなどの方向性が登場している。
しかし「優良企業」とは何なのだろう。
ESG経営を行っていて、業績が右肩上がりで、社外役員や女性役員が多い。
財務体質も健全でROEが2ケタ以上というのもあるのだろう。
しかしこれが「優良企業」の条件なのだろうか。
80年代の日本企業のいくつかは「エクセレント・カンパニー」と呼ばれていたことがある。
あるいは「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われてこともある。
価値観が変わった訳ではなく、おそらく成長性が陰り、エクセレントの座を明け渡したのだろう。
ということは、エクセレント・カンパニーにまず求められるのは事業の継続と成長性。
この成長性こそが、株式市場で求められるものだ。
しかし、今行われようとしているのは「時価総額の基準の引き上げとか英文開示などの義務付け」。
どうぞ1部へ来てくださいと招聘して、今度は突き放すかのような「時価総額増加期待」。
あまりに企業を弄んでいるように見えるのは気の所為だろうか。
収益の改善の見えない企業、あるいは時価総額の増えない銘柄にペナルティというのは理解できる。
ということは今回の動きは「叱咤激励」と考えてよいのかも知れない。
一方で課題となるのは「上場企業による自社株の消却の増加」。
2018年度は5兆3000億円強と過去最高を更新する見通しだという。
「消却」は自社株買いで市場から取得した株式を企業が消滅させること。
発行株式数の減少や、無駄な資本を圧縮する効果に期待しているということだろう。
「資本効率の改善などで本気度を示し株主重視を強く打ちだそうとする動き」との解釈だ。
しかし・・・。
「剰余金を設備投資に回すよりも自社株買いに回した方が良い」というのは株価的発想なのだろうか。
「自社株を買う方が、事業の進展よりも儲かる」という発想では、成長は覚束ないような気がする。
財務的にROEを高くすることが至上命題というのは正論だがある意味学者の論理。
成長性こそ株価であるならば、業容の拡大に資金は投入すべきだろう。
縮小均衡の世界に発展はない。
(兜町カタリスト 櫻井英明)